失われたエンキの記憶:第2粘土板要約



 勇壮なキングウを見たとき、彼(ニビル)の目はかすんだので、怪物たちを見ていると彼の方向は軌道からはずれた。進路が狂い、行動が混乱した。ティアマトの絆は彼女をしっかりと取り巻き、恐怖で彼らは震えた。ティアマトは根幹まで振動し、大きいうめき声を発した。彼女はニビルに呪いをかけ、その力で彼を飲み込んだ。闘いは避けられないものとなった!
 ティアマトとニビルは直接対決した。お互い相手に向かって突き進んだ。彼らは闘いのために近づいた、一回の闘いのために前進した。
 主は彼女を捕らえるために、網を広げた。怒り狂ったティアマトは叫び声を上げた、憑依された者のように彼女は感覚を失った。今まで彼の背後にあった「悪い風」が、ニビルを前方に駆動し、彼女の顔にそれを解き放った。彼女は「悪い風」を飲み込むために口を開けたが、唇を閉ざすことができなかった。「悪い風」は彼女の腹部に向かって突撃し、彼女の内臓目がけて突き進んだ。彼女の内臓は唸り声を上げ、体は膨張し、口は大きく開かれた。その開口部めがけてニビルは輝く矢、非常に聖なる光を発射した。それは彼女の内臓を突き刺し、腹部を引き裂き、彼女の子宮まで引き裂き、心臓を真二つにした。このようにして彼は彼女を弱め、そして命の息を消した。
 ニビルは命を失ったその体を調査した、ティアマトは今では屠殺された動物のようだった。屍となった女主人の横に、彼女の11人の助手(衛星)が恐怖のあまり震えていたが、ニビルの網に彼らは捕らえられた、逃れることはできなかった。ティアマトにより衛星の主席補佐官とされたキングウもその中に含まれていた。主は彼に手かせ足かせを付し、屍と化した女主人に彼を縛り付けた。彼は不正に与えられていた「天の文字盤」(又は「宿命の命盤」)をキングウからもぎ取り、自らの封印を押し、自分の胸にその「運命」を結わえ付けた。ティアマトの他の衛星を彼は捕虜として拘束し、自分の軌道の方へ彼らを誘った。彼は彼らを足で踏みつけ、ちりぢりに切り裂いた。彼は彼らをすべて自分の軌道に拘束し、彼らを反対方向に回転させた。
 それから、彼を任命した神々に勝利を宣言するために、ニビルは戦場を離れた、
 彼はApsu(訳注:太陽)の周りを回り、キシャー(又はキシャール)とアンシャー(又はアンシャール)の方へ旅をした。ガガが挨拶にやって来た、それから他の惑星の伝令者として彼は旅を続けた。ニビルはアンとアントゥを越え、「深い所の住居」に向かって進んだ。それから彼は屍と化したティアマトとキングウの運命を考えた。その後主ニビルは、鎮圧されたティアマトのところに戻って来た。
 彼は彼女の方に近づき、しばし立ち止まり命の尽きた彼女の体を見た。彼は心の中でその怪物を芸術的に2分しようと計画した。それから彼は、ムラサキイガイのように、彼女を2つの部分に引き裂き、彼女の胸の部分と下部とを分離した。
 彼は彼女の内部の通路を切り離し、金の鉱脈を驚きのあまり見た。主は彼女の後ろの部分を踏みつけ、上の部分を完全に切断した。彼は援助者として「北風」(訳注:ニビルの衛星の一つ)を脇から呼んだ。分離した頭の部分を追い出し、何もない場所にそれを置くよう彼は「北風」に命じた。ニビルの「北風」は、ほとばしる水を吹きつけながらティアマトの上空をさまよった。ニビルは光を放った、「北風」に合図を送るために。ティアマトの上部は輝きと共に未知の領域に運ばれた。彼女と共に拘束されているキングウも一緒に追放された。
 それから後ろの部分の運命についてニビルは考えた。闘いの永遠のトロフィーとしてそれを彼は維持して置きたかった。天で絶えずそれを思い出させるために、「闘いの場所」を聖なる場所として保存するために。彼は棍棒を使って後ろの部分を粉々に砕いた。それから「砕かれた腕輪」を形成するため、紐のようにそれを一つにつなぎ合わせた。彼は彼らを一つに連結し、見張り番としてそこに配置した。水と水を分離するための天空。天空の上の水を天空の下の水から彼は分離した。このようにしてニビルは芸術作品(小惑星帯)を作った。
 それから主は各地を調査するため天を横切った。アプスの地区からガガの住居地まで彼は寸法を測った。それからニビルは深淵の端を調べ、誕生の地の方向へ視線を投げた。彼は立ち止まり躊躇し、それから天空、「闘いの場所」の方へ、ゆっくりと戻った。アプスの地域を再び通りながら、いなくなった太陽の配偶者のことを彼は悔恨の思いで振り返った。彼はティアマトの傷ついた半分を見つめた、彼女の上の半分に彼は注意を向けると、命の水が、豊富に、今でも傷口から流れ出ていた。金の鉱脈がアプスの光線を反射していた。
 ニビルは、自分を創った創造主の遺産、「命の種」のことを思い起こした。ティアマトを踏みにじったとき、彼女を引き裂いたとき、確かに彼は命の種を彼女に与えている!彼はアプスに話しかけた、彼に次のように言った。あなたの暖かい光線で、傷口を癒して下さい!破壊された部分に新しい命与え、あなたの家族の娘として下さい、水を一ヵ所に集め、しっかりした大地を出現させましょう。しっかりした大地の故に、今後彼女をKi(キ)と呼びましょう!
 アプスはニビルの言葉に耳を傾け、キ(地球)を私の家族に加えよう「下のしっかりした大地」であるキ、今後彼女の名前を地球と呼ぼう!回転に従って昼と夜が生まれる。昼には私の癒しの光線を彼女に提供しよう。キングウを夜の生き物にしよう、夜輝くよう私は彼を任命する。永遠に地球の同伴者、月となるように!ニビルはアプスの言葉を満足して聞いた。
 彼は天を横切り各地を調査した。彼を高めてくれた神々に彼は永遠の場所を与えた。互いに侵害することも短すぎることもないような軌道を彼は運命づけた。天の連結を彼は強め、両側に門を確立した。一番外側の住まいは彼自らが選んだ、それはガガを越えた所にあった。
 偉大な軌道が彼の運命となるよう彼はアプスに懇願した。神々は全員それぞれの場所から声を上げた「ニビルの主権を最高のものとしよう!」。彼は神々の中で最も輝かしい、彼こそが太陽の唯一の息子であるべきだ!アプスはその位置から祝福を与えた。ニビルは天と地を横切っている「横断」を彼の名前としよう!神々は上も下も横切ることをしない。彼は中心的位置を占め、神々の羊飼いとなるべきである。シャーが彼の一周、それを彼の永遠の運命としよう!


これは如何に「昔の時代」が始まったか
 そして年代記に「黄金時代」として知られている時代について、そしてニビルから地球へ金を得るために派遣団が如何に送られたかの説明。
 アラルがニビルから逃亡したのがその始まりだった。
 アラルには偉大な理解力が与えられていた、学習により多くの知識を彼は得た。彼の先祖アンシャーガルにより天と軌道に関する知識が増え、エンシャーにより知識が大幅に増大した。アラルはそれを盛んに学習した。彼は賢者たちと語り、学者や司令官たちに相談した。このようにして原初の知識が確認され、アラルはその知識を得た。「砕かれた腕輪」に金のあることが確認された、「砕かれた腕輪」に金があるということは、ティアマトの上半分にも金があることをそれは示していた。
 金の惑星にアラルは無事到着した、彼の戦車は轟音とともに着陸した。自分の居る場所を確認するために、光線を使って彼はその場所を走査した。彼の戦車は乾いた大地に降りていた、広い沼地の端に着陸していた。
 彼は鷲のヘルメットをかぶり、魚の服を着た。戦車のハッチを彼は開けた。ハッチを開けたとき彼はしばし立ち止まり思いに耽った。大地は黒っぽい色をしており、空は青と白だった。何の音もしなかった、彼に挨拶する人は誰もいなかった。彼はただ一人異星の地に立っていた、ニビルから永遠に追放の身になったのではないかと考えながら!
 大地に彼は降り立ち、黒っぽい土壌の上を歩いた。遠くに丘が見え、近くには植物が繁茂していた。前方には沼地があった、彼は沼地の中に歩を進めた。水の冷たさに彼は身震いした。乾いた地に彼は戻った。ただ一人異星の地に彼は立っていた!彼は思いに耽った、配偶者と子孫のことを彼は懐かしく思い出していた。彼はニビルから永遠に追放されたのだろうか?何度も何度も彼はそれを考えた。間もなく彼は戦車に戻った、食べ物と飲み物で体を維持するために。それから深い眠りが彼を襲った、強烈な眠気だった。どのくらい眠ったのか彼には分からなかった。何が彼の目を覚ましたのかも検討がつかなかった。外は明るかった、ニビルでは見たことのないような輝きだった。彼は戦車から竿を伸ばした、それには試験器が付いていた。その機器は惑星の空気を吸い込み、呼吸可能であることをそれは示していた!彼は戦車のハッチを開け、開いたハッチから息を吸い込んだ。
 もう一度息を吸った、それから更に何度も吸った。キの空気は本当に呼吸可能だった!アラルは手を叩いた、喜びの歌を彼は歌った。鷲のヘルメットなしに、魚の服なしに、彼は大地に降り立った。外の明るさは目を眩ませるほど太陽光線は強烈だった!彼は戦車に戻り、目に保護マスクを付けた。(それから)携帯用の武器を身に付け、手軽な標本採集装置を取り上げた。彼は大地に向かって降りて行き、黒っぽい土壌に一歩を踏み出した。それから沼地に向かって進んだ。水は濃い緑だった。
 沼地のそばに小石があった。アラルは小石を一つ取り上げ、沼地めがけてそれを投げた。沼地に動くものが見えた、水は魚で一杯だった!沼地の中に標本採集装置を入れた、濁った水(の状態)を調べるために。水は飲み水としては適していなかった、アラルは大いに失望した。彼は沼地から離れ、丘の方に向かった。植物の間を通って行った。藪が樹木に替わった。そこは果樹園のようだった、木には果物がたわわに実っていた。その甘い香りに誘われ果物を一つもいで、彼はそれを口の中に入れた。甘い香りがした、味は更に甘かった!アラルは大いに喜んだ。
 太陽光線と反対の方にアラルは歩いた、丘の方に彼は向かった。木々の間(を歩いているとき)足元に彼は湿り気を感じたので、近くに水がある印だった。湿り気の方向に彼は向かった。森の中央に池があり、静かに水を湛えていた。池の中に標本採集装置を入れた。その水は飲み水に適していた!アラルは笑った、彼は笑いを止めることができなかった。空気は良かった、水も飲み水に適していた、果物もあった、魚もいた!アラルは急いで腰をかがめ、両手で水をすくい、それを口に運んだ。水は冷たかった、味はニビルの水とは違っていた。もう一度飲んだ、それから彼は驚いて跳び上がった。
 シュッシュッと鳴る音が聞こえた。池のそばである生き物が滑るように動いていた!彼は携帯用の武器をつかみ、シュッシュッと言っているものの方に光線を放った。動きは止まった、シュッシュッという音もしなくなった。危険かどうかを調べるためアラルは前進した。滑っていた生き物は動かなかった。その生き物は死んでいたが、非常に不思議な光景だった。その長い体は紐のようだった、手も無ければ足も無かった。小さい頭には獰猛な目があった、口からは長い舌が突き出ていた。ニビルではそういう光景は見たことがなかった、別世界の生き物だった!これは果樹園の保護者なのだろうか?アラルは考えた。これは水の主人なのだろうか?彼は自問した。彼は携帯用のフラスコに水を集め、注意しながら彼は戦車の方へ戻った。甘い果物を彼はもう一つもいで、戦車の方へ彼は進んだ。太陽光線の輝きは減じ、戦車に着いたときは真っ暗だった。1日の短さを彼は考えた、その短さに彼は驚いた。
 沼地の方角から淡い明かりが地平線上に昇って来た。白い色の球体がすぐに天に昇った。彼は今地球の同伴者であるキングウを見ていた。原初の説明が真実であることを彼は今その目で見ることができた。惑星(複数)とその軌道、砕かれた腕輪、キである地球、その月であるキングウ、すべてが創造された、すべてその名前で呼ばれていた!
 アラルはもう1つ重要な事実の確認が必要であることを知っていた。救済の手段である金を発見する必要があった。原初の話しが真実であれば、もし水でティアマトの金の鉱脈が洗われたのであれば、切り取られた半分であるキの水の中に、金が発見されるはずだ!アラルは手を震わせながら戦車の竿から試験器を外した。彼は震える手で魚の服を着た、日の出を今か今かと待ちながら。日の出と同時に彼は戦車を出た、沼地の方へ彼は足を速めた。水の深い所まで進み、試験器を水の中に差し込んだ。彼は輝いている試験器の表面を熱心に見つめた、心臓は大きい音を立てて鼓動していた。試験器は水の成分を示していた、記号と数字を使って発見した内容を表示していた。それからアラルの心臓の鼓動は動きを止めた。水の中に金がある、試験器がそれを示していた!震える足でアラルは前進した、沼地の更に深い所へ彼は進んだ。再び彼は試験器を水の中に差し込んだ、再び試験器は金の存在を表示した。叫び、勝利の叫びが、アラルののどからほとばしり出た。今やニビルの運命は今や彼の手の中にあった!
 彼は戦車へ戻り、魚の服を脱ぎ、司令官の席に座った。全ての軌道を知っている「天の文字盤」を彼は起動した、ニビルの軌道の方向を知るために。「言葉を話す機器」を彼は起動した、ニビルの方へ言葉を送るために。それから彼はニビルに向けてメッセージを送り、次のように語った「偉大なアラルの言葉をニビルのアヌへ送る。私は今別の世界にいる、救済のための金を私は発見した。ニビルの運命は私の手の中にある。あなたは私の条件に耳を傾けなければならない!」

(第2粘土板の終わり)



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